後悔を失くした令嬢は、栄光の檻の中で微笑む– category –
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後悔を失くした令嬢は、栄光の檻の中で微笑む
『後悔を失くした令嬢は、栄光の檻の中で微笑む』
あらすじ 没落した伯爵令嬢レティシアは、願いを叶える代わりに“後悔”を失った。再び貴族に返り咲き、愛と栄光を手にした彼女を待っていたのは、心のない微笑みと、虚無の感情。幸福の形を見失った令嬢の、静かに崩壊していく魂の物語。 目次 プロローグ第... -
後悔を失くした令嬢は、栄光の檻の中で微笑む
第一章 没落した伯爵令嬢
王都リュセールの裏通りにある安宿。 煤けた天井、ひび割れた壁、湿った布で覆われた窓。 ここが、わたしの寝床だなんて――馬鹿げている。 ヴァルフォール伯爵家の令嬢であったわたしが、家畜小屋も同然の場所で眠り、目を覚ますなんて。木枠に掛かる粗末な... -
後悔を失くした令嬢は、栄光の檻の中で微笑む
プロローグ
拍手は海鳴りのように続く。王都リュセールの大舞踏会で、わたしは笑うように微笑を置き、次の拍手の波を待つ。 胸元で宝石が小さく鳴り、シャンデリアの光が紅いドレスの裾を爪のように撫でていく。視線が集まっている。羨望、嫉妬、祈りにも似た期待――す... -
後悔を失くした令嬢は、栄光の檻の中で微笑む
第二章 伯爵家の”西方の薔薇”
伯爵家の長女として生まれたときから、両親はわたしを宝石のように扱い、何一つ不自由なく与えてくれた。わがままを言えばすぐに通り、叱られることもなかった。 母親から生まれながらに貴族であると教えられ、そう信じていた。 姿形には恵まれていたし、... -
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第三章 願いを売る店
南の市街地、古時計塔を通り過ぎる。 路地に入ると、昼なお薄暗く、湿った石畳に靴音が吸い込まれ、腐敗した果物と雨水の匂いが鼻を突く。こんな不愉快な場所を歩いている――それ自体が屈辱だ。 けれど、フルール――名も知らぬあの男爵令嬢の言葉が、頭から...
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