君と描く蒼い月夜– category –
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君と描く蒼い月夜
プロローグ
プロローグ ——蒼い満月の夜、また君に会えた その夜、世界は蒼く染まっていた。 蒼い満月——ブルームーン。 雪をいただく山々の稜線も、眠る町も、すべてが青白い光の中で息を潜めている。 私はベッドの上に座ったまま呆然としていた。 目の前には——白い髪... -
君と描く蒼い月夜
第一章 蒼い満月の伝承
蒼い満月は、ただ空を照らすだけのものではない――。 その夜、天と地の境はほどけ、世界がひとつになる。神に願いが届けば「思い出づる《おもいいずる》国」への扉が開き、そこでは死者と再び会えた者もいれば、天啓を授かった者もいたという。翼を与えられ... -
君と描く蒼い月夜
第二章 失意の帰郷
列車が緩やかな勾配を下るたび、車輪のきしむ音が一定のリズムで耳に響く。 窓辺にもたれながら、流れていく景色をぼんやりと眺めていた。 赤茶けた屋根の家々が遠ざかり、代わりに野原と風車の並ぶ小さな集落が近づいてくる。 そのどれもが懐かしくて、で... -
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第三章 ぬくもりの在処
蒸気を吐きながら、列車が緩やかに減速を始めた。 車輪が軋む音に続いて、窓の外の風景が少しずつ動きを止めていく。 故郷の小さな駅に、ようやく辿り着いたらしい。 ベージュ色のコートの前を軽く合わせ、荷物を抱えて立ち上がった。 扉が開くと、冷たい... -
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第四章 蒼い満月の夜に
夜も更け、食後の皿を下げたあと、それぞれ紅茶のカップを手に、暖炉の前に腰を下ろしていた。薪の燃える音だけが、部屋の中にゆるやかなリズムを刻んでいる。 私は、暖炉の火をぼんやりと見つめながら、両親のそばにいた。 母・リゼットは椅子の肘掛けに...