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君と守りし妖精の藍花
第三章 藍の森、ふたりの足音
蒼月の森の奥深く。 少年と妖精は、ゆっくりと静かな道を進んでいく。 道なき道。 絡み合った枝や茂みが行く手をふさぐが、宙を舞う小さな妖精が先を照らし、少年はその後を迷わずに歩いていった。 「ねえ、妖精って……みんな君みたいに飛べるの?」 ふいに... -
君と守りし妖精の藍花
第二章 ひとひらの出会い、手のひらの道標
夜が明けはじめ、森の霧がやわらかくほどけていく。 鳥たちがまだ目を覚ます前、淡い光が差し込む木漏れ日の中で、少年はゆっくりと目を覚ました。 目に映ったのは、静かに座る、小さな妖精の横顔。風に揺れる藍紫の髪が、夜明けの光をやさしく包んでいた... -
君と守りし妖精の藍花
第一章 蒼月の森と忘れられた羽音
霧に沈む、蒼月の森。昼は音もなく白く煙り、夜になると、空に浮かぶ蒼い月が、木々のすき間から淡く光をこぼしていた。 風がそよげば、葉がささやき、時おり小さな羽音が、静けさを裂いて消えてゆく。 昔、この森には——藍色に光る花が咲き誇っていた。そ... -
短編ストーリー集
『天使いとドラゴン』
静かに瞬く星空の下、出会ったのは、掟に縛られた天使と、“災厄”と呼ばれた黒きドラゴンでした。これは、世界の決まりを超えて――誰かを想う心が導いた、優しい物語。 1話 星の問いかけ 天の国に生きる天使たちは、地上のドラゴンに関わってはならない。 ... -
短編ストーリー集
『人形は静寂の中で』
——誰にも、知られずに。 古びたカフェの片隅に、誰も気づかないまま、長い時を過ごしてきた存在があった。 それは、声も持たず、動くこともできず、ただ静かに世界を見つめ続ける“人形”。 けれど、もしその瞳に心があるのなら—— 彼女は、ずっと待っていた...