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後悔を失くした令嬢は、栄光の檻の中で微笑む
第五章 過去との再会
婚約が決まった報せが王都を駆け巡り、レティシア・ヴァルフォールの名は再び社交界の華として囁かれるようになった。 けれど――その呼び声も、もはや胸を熱くはしない。 日を追うごとに、父を責めた夜も、兄を憎んだ瞬間も、母に裏切られた痛みも――思い返... -
後悔を失くした令嬢は、栄光の檻の中で微笑む
第四章 栄光の回帰
契約を交わした翌朝。 湿った布で覆われた安宿の窓から、薄い朝の光が差し込む。 身を起こし、眠りの残滓を振り払った。 その時、コンコンと扉を叩く硬い音。 「失礼。レティシア・ヴァルフォール嬢で、お間違いありませんか?」 低く、よく通る声が響いて... -
後悔を失くした令嬢は、栄光の檻の中で微笑む
第三章 願いを売る店
南の市街地、古時計塔を通り過ぎる。 路地に入ると、昼なお薄暗く、湿った石畳に靴音が吸い込まれ、腐敗した果物と雨水の匂いが鼻を突く。こんな不愉快な場所を歩いている――それ自体が屈辱だ。 けれど、フルール――名も知らぬあの男爵令嬢の言葉が、頭から... -
後悔を失くした令嬢は、栄光の檻の中で微笑む
第二章 伯爵家の”西方の薔薇”
伯爵家の長女として生まれたときから、両親はわたしを宝石のように扱い、何一つ不自由なく与えてくれた。わがままを言えばすぐに通り、叱られることもなかった。 母親から生まれながらに貴族であると教えられ、そう信じていた。 姿形には恵まれていたし、... -
後悔を失くした令嬢は、栄光の檻の中で微笑む
プロローグ
拍手は海鳴りのように続く。王都リュセールの大舞踏会で、わたしは笑うように微笑を置き、次の拍手の波を待つ。 胸元で宝石が小さく鳴り、シャンデリアの光が紅いドレスの裾を爪のように撫でていく。視線が集まっている。羨望、嫉妬、祈りにも似た期待――す...