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『君と守りし妖精の藍花』第6話 君のいない森に、藍は咲く
妖精は、そっと少年の前に飛び立った。小さな羽音が、湖の静けさをそっと揺らす。 「ねえ……」 その声に、少年が顔を上げる。祈るように見つめるまなざしが、そこにあった。 「私ね、わかったの。私が何者で、なぜ生まれてきたのか……そして、何を残すべきな... -
『君と守りし妖精の藍花』第5話 涙の湖と最後の種
妖精は、ゆっくりと重い記憶を語りはじめた。ひとつ、またひとつ──掘り起こすように。 妖精の国が滅びた理由。藍色の花の真実。人間との希望と、そして破滅の物語——そのすべてを。 少年は、ただ黙って聞いていた。真剣なまなざしで、目をそらすことなく。... -
『君と守りし妖精の藍花』第4話 罪の記憶と藍の約束
深く、静かな霧が森を包んでいた。 妖精と少年は、幾重にも重なる古木を越え、冷たい苔の絨毯を踏みしめながら進んでいた。森の奥へと進むにつれ、妖精の胸の奥に眠る記憶の断片が、微かに呼び起こされていくような感覚があった。それとともに胸のうちに押... -
『君と守りし妖精の藍花』第3話 藍の森、ふたりの足音
蒼月の森の奥深く。 少年と妖精は、ゆっくりと静かな道を進んでいく。 道なき道。 絡み合った枝や茂みが行く手をふさぐが、宙を舞う小さな妖精が先を照らし、少年はその後を迷わずに歩いていった。 「ねえ、妖精って……みんな君みたいに飛べるの?」 ふいに... -
『君と守りし妖精の藍花』第2話 ひとひらの出会い、手のひらの道標
夜が明けはじめ、森の霧がやわらかくほどけていく。 鳥たちがまだ目を覚ます前、淡い光が差し込む木漏れ日の中で、少年はゆっくりと目を覚ました。 目に映ったのは、静かに座る、小さな妖精の横顔。風に揺れる藍紫の髪が、夜明けの光をやさしく包んでいた...