aico– Author –
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君と描く蒼い月夜
最終章 色彩の余韻
それから三週間後後—— 陽光が射し込む昼下がり、ギルドにある彩飾師セナの“彩の間”では、静かな打ち合わせが続いていた。 深緑の法衣を纏った年配の司祭が、彩色が施された《蒼い満月の伝承録》の下絵を手に取り、目を細めている。 「……これは、見事なもの... -
後悔を失くした令嬢は、栄光の檻の中で微笑む
『後悔を失くした令嬢は、栄光の檻の中で微笑む』
あらすじ 没落した伯爵令嬢レティシアは、願いを叶える代わりに“後悔”を失った。再び貴族に返り咲き、愛と栄光を手にした彼女を待っていたのは、心のない微笑みと、虚無の感情。幸福の形を見失った令嬢の、静かに崩壊していく魂の物語。 目次 プロローグ第... -
後悔を失くした令嬢は、栄光の檻の中で微笑む
エピローグ
どこかの街角。白いカーテンの下りた窓。店とも部屋ともつかぬ小さな空間で、フェリシティは膝に本を置いていた。雪のような髪、深い黒の瞳。 『後悔は、魂に刻まれた過去の傷ではない。それは未来を照らすための灯火である』――アルベール・デュラン 「こ... -
後悔を失くした令嬢は、栄光の檻の中で微笑む
最終章 栄光の牢獄
胸の奥にあった鋭い棘は抜かれ、穴も塞がっている。ただ、静かだ。驚くほどに。 “後悔”という名の熱源は、完全に消えた。 ――いまのわたしには、悔やむという心の動作は存在しない。 過去を振り返っても、あの日の屈辱はただの出来事として頭の棚に並ぶだけ... -
後悔を失くした令嬢は、栄光の檻の中で微笑む
第六章 後悔の欠片
フルールと再会した夜。寝室の天蓋の布目を数えても、ひとかけらの眠りも降りてこない。 恐ろしい。 ”後悔のない人生”など、何の希望もなく生きるのと同じ。そんな大事なことに、今頃気づくなんて……。 このままでは、本当に“人形”のようになる ――社交界に...