aico– Author –
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『死神と3日間だけの友達』第1話 死神の訪れ
その夜、街は霧に包まれていた。 細い路地を白く染める靄のなか、誰も気づかぬ足音が、石畳をすべっていく。月は雲の合間から顔を覗かせ、濡れた屋根瓦に銀の光を落としていた。 誰もが眠りにつくその時、ひとつの小さな家の前で、黒衣の女が立ち止まる。... -
『死神と3日間だけの友達』第2話 死神と友達になった日
朝が来た。 霧はまだ街の屋根を這っていたが、少女の部屋にはやわらかな光が差し込んでいた。カーテンの向こうで鳥が鳴き、小さな世界に、日常という名の幕がひらく。 しかしその部屋に、もう昨日までの日常はなかった。窓辺の椅子には、黒と墨の混じった... -
『君と守りし妖精の藍花』最終話 蒼き約束の森
少年は、再び蒼月の森を目指して歩き出した。 かつて、あの小さな妖精と並んで歩いた森の小径。 風にそよぐ葉の囁きが、どこか懐かしく胸を締めつける。 深く、奥へ。 優しい霧の中を踏みしめながら、少年は静かに歩を進めた。 やがて── あの湖畔へ辿り着... -
『君と守りし妖精の藍花』第8話 つながれる約束
* * * 数日後—— 朝の光が、そっと部屋に差し込んでいた。 眠る妹の顔は、ほのかに微笑んでいた。 けれど、その微笑みのまま—— 彼女は静かに、最後の息を引き取った。 少年は、そっと妹の小さな手を握りしめる。 そして、かすかに囁いた。 「……ありが... -
『君と守りし妖精の藍花』第7話 妖精と見る夢
少年は、静かな湖畔を後にした。妖精の国があった場所を振り返ることなく、まっすぐ帰路につく。 いくつもの夜を越え、ようやく家の前にたどり着いたとき——扉の前で深く息を吸い、静かに扉を叩いた。 「……ただいま」 開いた扉の向こうで、母親は言葉を失っ...