aico– Author –
-
『君と守りし妖精の藍花』
プロローグ はるか昔。夜ごと青い月が空を照らし、森は静かな光に包まれていた。 その森の奥深く──まだ誰も踏み入れぬ湖のほとりに、藍色の花が一面に咲き誇っていた。 花の香りは、ささやくように眠りを誘い、訪れた者に安らかな夢を見せたという。 その... -
『死神と3日間だけの友達』
プロローグ この世界には、誰にも知られていない“理”がある。それは、人が「生の苦しみ」に耐えきれず、終わりを望んだとき――その声に、ひとりの死神が応えるというものだ。 その死神は、命を奪うためだけに現れるのではない。苦痛のなかで、もう一歩も前... -
『死神と3日間だけの友達』最終話 ひたなの広場
春が来た。 あの小さな街にも、長く閉ざされていた空が開け、やわらかな陽光が降り注いでいる。 通りには花が咲き、木々が芽吹き、人々の頬には笑みが戻っていた。 ひとりの黒衣の女が、街の外れにある小さな丘の上に立っていた。 白と墨を溶かしたような... -
『死神と3日間だけの友達』第4話 再会の約束
三日目の朝は、どこか特別な静けさを湛えていた。 風は止み、空気は澄みきっていた。霧は晴れ、窓の外には薄い青空が広がっている。少女の部屋にはやわらかな光が満ちていたが、それはどこか、終わりの訪れを告げるようでもあった。 死神は部屋の隅に立ち... -
『死神と3日間だけの友達』第3話 ことばの灯
二日目の朝は、静かに始まった。 夜に降った雨が、屋根を滑り落ちる音が聞こえる。死神は窓辺に座って外を見つめていた。少女はベッドに座り、眠そうに目をこすっている。 おはよう、死神さん…… ……ああ。よく眠れたか? うん、よく覚えてないけど、『ミー...